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【イラスト書評】『すっぽん心中』戌井昭人

 

すっぽん心中

超要約

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すっぽん心中

すっぽん心中

 

 

流れのままに行く2人

将来に対する展望もなく趣味もなく、日々をただ無為にやり過ごしている田野は、ある日、仕事中に交通事故に遭い、ムチ打ちで首が横を向いたままになってしまう。リハビリの帰り、上野公園で休んでいると、突然、知らない若い女に話しかけられる。大きなボストンバックを担いだ彼女、モモは、転がり込んだ男の家から追い出され、昨日からポテトチップス一袋しか食べていないと言う。特にすることもない田野は、モモをとんかつ屋に連れて行く。

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とんかつのお礼に、首をマッサージするというモモ。2人で湯島近辺をぶらぶらし、マッサージができる場所を求めてラブホテルへ。そこで流れていたテレビのグルメ番組を見て、モモはすっぽんが金になると独り合点。2人で茨木の霞ヶ浦へ獲りに行こうと田野を誘う。すっぽんなんて捕れるわけないと思いながらも、田野はこのままあっけなく別れるのも寂しいと感じ、モモに付き合う。

 

■土手で現れないすっぽんを待つ2人

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脱力系のノリとそこはかとない閉塞

「流れのままに」で始終「とほほ」な展開が笑える。しかし見方を変えると、置かれている状況を決して深追いしない、息が詰まる現実にフォーカスが合いそうになれば意図的にボカすという、閉塞への麻痺も感じられて、なんだか闇が深いようにも思えてくる…。50ページ弱でさくっと読める。

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内容(Amazonより)
変化を求めず、目の前のことをやり過ごしてきた田野と痛い目に遭いつづけながらあっけらかんとしたモモ。不忍池で出会ったふたりは上野から霞ヶ浦をめざす。どんづまりを描きもはや笑うしかないのか「すっぽん心中」。スイッチの入った男の狂騒「植木鉢」、屋上の狂人のバトルと本心「鳩居野郎」を併録。おかしさと哀愁は他の追随を許さぬ現代小説。