【イラスト書評】『すっぽん心中』戌井昭人
超要約
流れのままに行く2人
将来に対する展望もなく趣味もなく、日々をただ無為にやり過ごしている田野は、ある日、仕事中に交通事故に遭い、ムチ打ちで首が横を向いたままになってしまう。リハビリの帰り、上野公園で休んでいると、突然、知らない若い女に話しかけられる。大きなボストンバックを担いだ彼女、モモは、転がり込んだ男の家から追い出され、昨日からポテトチップス一袋しか食べていないと言う。特にすることもない田野は、モモをとんかつ屋に連れて行く。
とんかつのお礼に、首をマッサージするというモモ。2人で湯島近辺をぶらぶらし、マッサージができる場所を求めてラブホテルへ。そこで流れていたテレビのグルメ番組を見て、モモはすっぽんが金になると独り合点。2人で茨木の霞ヶ浦へ獲りに行こうと田野を誘う。すっぽんなんて捕れるわけないと思いながらも、田野はこのままあっけなく別れるのも寂しいと感じ、モモに付き合う。
■土手で現れないすっぽんを待つ2人
脱力系のノリとそこはかとない閉塞
「流れのままに」で始終「とほほ」な展開が笑える。しかし見方を変えると、置かれている状況を決して深追いしない、息が詰まる現実にフォーカスが合いそうになれば意図的にボカすという、閉塞への麻痺も感じられて、なんだか闇が深いようにも思えてくる…。50ページ弱でさくっと読める。