【イラスト書評】『大栗先生の超弦理論入門』大栗博司
超要約
超極小の世界から見えてきたもの
アインシュタインの「一般相対性理論」(重力の理論)発表からほどなく、ミクロな世界を解明する「量子力学」が確立された。やがて二つの理論の間には、深刻な矛盾があることがわかった。その突破口として、物質の基礎が「ひも」であるという「超弦理論」が、両者を矛盾なく統合できる唯一の理論として期待されている。これを掘り下げてゆくと、三次元だと思っていた空間が四次元になったり、二次元になるという現象が起きる。
こうした「空間の次元」が、「超弦理論」では変化してしまう(ある次元からある次元へと移り変わったり、見方によって、異なる次元で起きているように見える)。これはたとえば、水と氷が、同じ分子だけれども結合の仕方の違いでマクロな視点からは違うものに見えることに似ている。
これと同じように、超弦理論では空間というものもまた、何か他のものの二次的な概念、すなわち幻想にすぎないのではないかということが示唆されている。
量子力学や素粒子論の概要から始まって、超弦理論の成り立ちや考え方、そして空間は「幻想」であり、時間もあるいはそうかもしれないという地平に至るまでを「できるだけ少ない予備知識で」読めるようにたどる。第30回講談社科学出版賞(2014)受賞。
これ以上ないくらいに懇切丁寧。が、しかし……
自分の頭が度し難いほど悪いように思えてくる。手とり足とり、すごく噛み砕いて説明されているのはわかるのだけど、少し込み入った話になると、脳みそパーン! それでも文章は平易でどんどん読み進められるし、大局的な面を追うだけでも面白い。理系的素養のある人ならきっと抜群に面白いだろう。