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【イラスト書評】『憂鬱たち』金原ひとみ

 

憂鬱たち (文春文庫)

超要約

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憂鬱たち (文春文庫)

憂鬱たち (文春文庫)

 

 

登場人物はほぼ3人

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病んでいて精神科へ行きたい憂と、彼女が行く先々に登場するカイズさんとウツイくん。しかしこの2人、まるで1人の役者が何役もこなすように、現れるたびに別人になって登場する。共通しているのは名前と年格好だけ。たとえば次のような具合。

 

■カイズさんの場合 

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■ウツイくんの場合

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時々、彼らとのやり取りは憂の妄想であることが明かされたりするので、実は実体があるのかどうかもアヤシイ…。

 

いつも精神科にたどりつけない

お話は全7編。毎回「精神科に行こうとして全くたどりつけない」という筋が中心になっている。

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常に被害妄想やエロ妄想に悩まされていて、そのせいで衝動的に思ってもみなかったほうへと自分を駆り立ててしまう。結果的に「どうしてこんなことに」という事態にばかり見舞われてしまうのだ。

 

どうしようもない自分を笑っちゃおうという境地を感じる

暴走する自意識を正面から描くと同時に、その滑稽さをも描いている。精神科にたどりつけなさ加減は、もはやカフカの『城』かも…。かなり笑った。

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内容(Amazonより)
 神田憂は、今日こそ精神科に行かなければと思いながら、さまざまな事態に阻まれてどうしてもたどり着けない。彼女の周りに出没する年上の男性カイズさんと若者ウツイくんはいったい何者なのか?エロティックな思考が暴走し、現実が歪みはじめる。グルーヴ感のある文体が冴えわたる官能的ブラックコメディ。