【イラスト書評】『しんがり 山一證券 最後の12人』清武英利
超要約
12人の「しんがり」
7千7百人からなる山一証券を廃業に追いやったのは、2千6百億円にも上る「簿外債務」(債務隠し)。「それはいつ、どのように、誰の決断で生まれ、どのような人間によって隠し続けられたのか」。見返りのない損な役回りでありながら、無給となっても真相の究明と清算業務に力を尽くしたのは、出世コースから外れ、日ごろ偏見の目で見られていた「業務管理本部」を中心とした面々。
度重なる幹部らの裏切りや、周りの冷たい反応を受けながらも、それぞれの信念とけじめのために、最後まで会社に踏みとどまる。
「しんがり」たちが仕上げた社内調査報告書は、やがて「日本企業の歴史に残る内省の資料となるだろう」と評されるほどのものとなる。第36回講談社ノンフィクション賞(2014)受賞。
誰かがやらなければならないことをやる
見返りがない上、あまつさえ後ろから石が飛んでくるような役にも関わらず、進んで務める姿に頭が下がる。刻々と終わりに向かっていく最中、役員から末端の社員まで、渦中の一人ひとりの状況が描写されていく。不謹慎かもしれないけども、映画『タイタニック』を彷彿とさせられた。非常時に際立つ個々人の尊い面には、背筋が伸びる思いがする。