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【イラスト書評】『春の庭』柴崎友香

 

春の庭

超要約

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春の庭

春の庭

 

 

写真集の家にあこがれて 

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元美容師でバツイチの太郎は、三年前からアパート「ビューパレス サエキⅢ」に住んでいる。ある日、最近越してきた二階の女が、アパートの中庭から隣の家に侵入しようとしているのを目撃する。

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アパートは取り壊しの計画が決まり、住人が続々と転出している状況。「ほら、もうこのアパート、わたしたち入れて残り四軒でしょう? 肩寄せ合って生きていきましょうよ」と巳さん。

 

西がこだわる隣の家

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隣の家は、かつて有名人夫婦が住み、その生活を活写した写真集『春の庭』の舞台だった。西の『春の庭』への思い入れを聞くうち、太郎も少しずつ隣の家が気になりはじめる。

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やがて始まる隣の家の住人との交流。西の視点や写真集を通して、かつてそこに流れていた時間と現在がゆるやかに交わる。第151回芥川賞(2014年)受賞。 

 

時間の地層を眺めるように

隣の家の話ばかりが中心というわけでもなく、アパートの住人のこと、住まう地域のこと、同僚や亡くなった父親のことなどが、そぞろ歩きするような独特の文体で描かれる。「今ここ」と積み重なる時間の気配を常に感じる、カラリとした無常感。

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内容(Amazonより)
第151回芥川賞受賞作。

行定勲監督によって映画化された『きょうのできごと』をはじめ、なにげない日常生活の中に、同時代の気分をあざやかに切り取ってきた、実力派・柴崎友香がさらにその手法を深化させた最新作。
離婚したばかりの元美容師・太郎は、世田谷にある取り壊し寸前の古いアパートに引っ越してきた。あるとき、同じアパートに住む女が、塀を乗り越え、隣の家の敷地に侵入しようとしているのを目撃する。注意しようと呼び止めたところ、太郎は女から意外な動機を聞かされる……
「街、路地、そして人々の暮らしが匂いをもって立体的に浮かび上がってくる」(宮本輝氏)など、選考委員の絶賛を浴びたみずみずしい感覚をお楽しみください。